導べの星 第2話 ― SCENE1 アンジェリーク 「いいこと、わたくしに恥をかかせないで頂戴」 「ロザリア、引っ張らないでってば、痛いっ」 「しーっ、静かになさいってば!!ここはもう宮殿の敷地内なのよ、これから女王陛下にお会いするのよ、わかってるの?」 「わ、分かってるわよ…」 「全く、わたくしのライバルがこんな子だなんて、本当に情けなくなってくるわ」 可憐な少女が二人。どうやら青い髪の少女が、金の髪の少女を引きずっているように見える。金の髪の少女はまだ半分寝ボケまなこで。 (おや、こんなところに女の子とは珍しいですね。新しいメイドでしょうか?ここには関係者以外は入れないはずですが…?) 謁見の間に向かっていたルヴァが立ち止まる。 守護聖全員に召集がかけられるのも珍しいが、ここに女の子がいるのはもっと珍しい。 もともと集合時間ぎりぎりではあったのだが(例のごとく、本を読んでいて時間を忘れていたのだ)、つい二人の様子を観察してしまう。 「それにしても広いわね。…時間もないのに、大丈夫かしら」 「…ロザリア、もしかして迷ったの?」 「わ、わたくしが迷うわけなどあるはずがないでしょう?わたくしは完璧なる女王候補よっ」 「ロザリア、冷や汗かいてるみたいだけど」 「あ、あそこに人がいるわね。ちょっと聞いてくるわ!」 道に迷ったことを深く突っ込まれる前に、早々にその場から立ち去るロザリアと呼ばれた青い髪の少女。取り残された金の髪の少女は軽くため息をつく。 反対側からその様子を見ていたルヴァは、残された金の髪の少女に近づいた。 「どうしたんですか、道に迷われたんですか?」 「えっ、えっと…」 「この先は関係者以外立ち入り禁止ですよ。よろしければ、目的地までご案内致しましょうか」 「いいんですか?」 少女の顔が明るく輝く。まるで太陽みたいな笑顔だ、とルヴァは心の中で呟く。 「はい、もちろんです。ここは広くて初めての人には不親切な造りなんですよ。どちらにご用なんですか」 「あの…」 答えようとしたその言葉は半ばで割り込んできたもう一人の少女の声に遮られる。 「アンジェリーク!ディア様のお部屋はこっちですって!」 「ディアの?それでは、あなた方は!」 「? どうかしましたか?」 かすかに眼を瞠り、複雑な表情で黙り込んでしまった青年を見てアンジェリークと呼ばれた少女が不思議そうな顔をする。 「アンジェリーク、どうしたの?早くなさいな。遅れてしまうわ!」 「あの、道、分かったみたいなので。どうもご親切にありがとうございました」 「そうですか…あなた方が…いえ、何でもありませんよ。もう迷わないよう、お気をつけて」 「はい。ありがとうございました」 もう一度礼を告げ、ぺこりとお辞儀をすると飛び跳ねるように去っていった。 ふんわりと風に揺れて輝く金の髪をぼんやり見送って。 (あの少女が、次代の女王候補…) 女王候補アンジェリークと地の守護聖ルヴァ。 二人の出会いは運命。 だが、まだ二人はお互いを知らない… (続く) 導べの星第1話へ 導べの星第3話へ ----------------- 作者より ゲーム設定無視しまくりのパラレルです(笑) SFCもしくはSPプレイされた方は覚えていらっしゃるかと思いますが、ロザりん、こんなとこでアンジェ引っ張ってちゃいけません(^^ゞ ロザリアのあの扉前の名台詞が使えなくなってしまったわ(爆) |