導べの星 第10話

― SCENE9 アンジェリーク


封じたはずの想いが鮮やかに蘇る。
もう二度と、思い出さないって決めたのに。




ロザリアが行ってしまって、あからさまに困惑しているのが伝わってくる。
あなたは優しい人だから。
私を困らせたりしないって知っているから。
でもね。
私の前ではそんな冷静なあなたでいて欲しくないの。
だから、思わず感情的になってしまったけれど。
そんな時まであなたはやっぱり優しくて、冷静で。

だけど。

あなたの想いが見えたような気がしたから。
だから、私は我侭を言った。

「ねぇ、ルヴァ?」
「はい?」
「一つだけ、わがままを言ってもいいですか?」
「…私に、できることでしたら」
「ありがとう。お願いがあるの」

じっと、見つめて。
告げてはならない、ありったけの想いを、このまなざしにこめて。

「いつか…いつか、時が満ちたら…私に夢を見せてもらえますか?」
「夢、ですか?」
「そう、夢。あなたにはきっと分かってもらえると思うの」
「夢、を・・・・・・」
鸚鵡返しのように問い返し、復唱する。

きっと、ルヴァ様はわかってくれる。
信じてる。

ルヴァ様はずっと私を見つめていた。
思わず、それ以上声をかけるのをためらってしまうほどに真剣なまなざしで。

タイミングよくロザリアたちが戻ってきて、その気まずい雰囲気はなくなったけれど、私はずっとあのルヴァ様の視線が忘れられなかった。
きっと、伝わったんだと思う。

私の願い。



(この力尽きる時・・・・・・)






(あなたの力が終わる時・・・・・・)






(あなたと、共に・・・・・・)












聖地でなくていい。
主星である必要すらない。
できたら、あなたの故郷の星なら嬉しいけれど、そうでなくても。
あなたと、共に暮らせればいい。

小さな家を建てましょう。
庭には大きな木があるところがいいわ。
あなたが大好きな、木陰で読書ができるように。

お休みの日には湖にお弁当を持って出かけるの。
出会った頃のように、あなたは釣りを、私は・・・そうね、一緒に釣りを覚えるわ。
飽きてしまったら、気持ちいい木漏れ日の下でお昼寝をしましょう。

そうやって、毎日を楽しく静かに過ごすの。
そして、気がついたら二人眠るように永遠の眠りにつけたらいい。


それが、私の夢。(続く)







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