※こちらは「通り雨」の彼氏サイドのお話になります。
下の方にネタバレがありますので、本編を読んでから読むことをお勧めします。
読んでからの苦情は一切受け付けませんm(__)m












通り雨 〜The Other Side〜




「あー、やだぁ、雨降ってきちゃったよ」
「ええっ、うそっ?私傘もってなーい」
「うーん、仕方ない。ね、コンビニで一本、傘買って、二人で帰ろ?」
「そうだねー、ああ、ついてないねー」



・・・雨?
彼女は今日、傘を持って出ただろうか?
朝はあれだけ晴れていたし、彼女の性格ではこういう日には…
いや、それよりも。
確か彼女の傘は私の家にあるのだ。
この前忘れたと言っていたではないか。
『今度行った時に持って帰るから、しばらく置いておいて』と。

・・・。


「お先に失礼しまーす」
「残業ですか?無理しない程度に頑張ってくださいね。お疲れさまでーす」
「ありがとう。お疲れさま」


短く交わす儀礼的な挨拶。
気が気ではないから。
本当は残業どころではない。

彼女が、濡れてしまうかもしれない?

「冗談ではない!」


思わず声にしてしまったらしく、周囲が驚いたように一斉に自分を見る。

「あ、いや…何でも。失礼しました」

その言葉に安心したのか、皆それぞれの仕事に戻った。
様子を確認して、ふっと息を吐き、机に向き直る。


なんとしても今日中にこの書類を仕上げねばならない。
そう、だから今日は彼女の誘いを断ってまで残業しているのだ。


仕上げなくてはならない…の、だ・・・。


(今日、忙しいんですか?お仕事じゃ仕方ないですよね。残念ですけど)


朝の電話での彼女の声が脳裏にこだましている。

そう、いつだって彼女のことを考えている。
彼女が全て、彼女のいない世界など意味がないのだから。





ふと見やった窓の外は雨が激しくなりつつあった。
これでは完全に濡れてしまう。

腕時計を見た。
今から車を走らせれば、いつもどおりならちょうど彼女が駅に着く時刻。

そう思ったら、もう歯止めが聞かなかった。

「すみません、ちょっと行ってきます!」
「え?ちょ、ちょっと待ちたまえ!」

椅子の背にかけた上着だけをつかんで、事務室を飛び出す。
後ろで上司がなにやら叫んでいたが、気にしない。
あとでこっぴどく叱られるかもしれないが、たいしたことではない。
「あちら」でのように命がけのことなんてここにはないのだ。


雨の中、彼女の最寄り駅に向かって車を飛ばす。

間に合えば良いが。












やはり、こちらを優先したのは正解だったようだ。

……あれは…天真か?

運転席から軽く手を挙げて合図すると、先に天真が気付いた。
一緒にいる彼女に教えたらしい。
彼女が慌てて振り向く。

車を止め、運転席から降りて、彼女にもわかるように手を挙げて合図しながら近づいて行くと、天真は逆方向の人ごみにまぎれていった。

相変わらずだ…


彼女の手に残る白いビニール傘を見て、彼の心遣いに感謝し、そして私を見て一気にほころんだ彼女の幸せな笑顔に感謝する。

大切な人の笑顔を見られる幸せに感謝を。(fin)





--------------
作者より

通り雨彼氏サイド。
ここまで来たら、名前出さずにやろうかと、できるだけ頑張って見たのですが、
これで少なくとも朱雀コンビ&永泉さんではないことが発覚しました(笑)
(え?最初からわかってた?(笑)これで半分に減りましたね?(^^ゞ)

できるだけ個性なくそうとしたので、今回なんだか文体変かも。
社内風景が妙にリアルなのはご愛嬌(汗)
でもこういうのも面白かったです。

































気付いちゃいました?(笑/気付くって、普通)
というわけで裏設定。

あかねちゃん 短大卒OL。会社帰り。
天真君 大学四年生。サークルのメンバーと食事して帰ってきたところ(そこまで細かい設定はいらないってば(笑))

お相手は見ての通り普通の会社員。お仕事はとっても真面目で有能と評判で、女子社員に人気があります。でもコンピュータは苦手そうですね(^^ゞ





え?まだ相手がわからない?
ですから、頼久さんですってば。
なんでといわれても私にもわかりません(苦笑)
創作の神様が降りてきたときはそんなものです<( ̄^ ̄)>(開き直り)
というわけで、頼久さんファーストの方々、しつこいようですが苦情は受け付けません(笑)




途中の「神子殿」に注目された方が多かったようですが、あれは天真君がちゃかしただけで、あんまり他意はないです。
例えば相手がイノリくんだとしても、天真君はこう言ったと思います。

「意外な人」と書いたので、さすがに鷹通さんと言ってきた人はいませんでしたね。
(書かなかったら、全員が鷹通さんだと思っていたらしい^_^; 書きわけができない己の文章力の無さを思い知らされる。。)

こんなくだらない妄想企画に長々お付き合い頂きありがとうございました(笑)
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