お休みを過ごす場所 「うふふ、きっもちいいーー やっぱり、天気のいい時はここが一番ね」 久々の休暇にはしゃいでいる少女。 名をという。 彼女の言葉だけ聞いていれば、ただ久々の外出を楽しんではしゃいでいるだけのように聞こえるのだが。 「クラヴィスさまーー気持ちいいですよ♪エルンストさんもどうですか?」 「、危ないですよ!降りていらしてください!!」 そう、問題は彼女のいる場所だった。 声をかけられたのは、頭上遥か上。 高い樹の梢なのだった。 見晴らしのよい丘の上の、更に樹の梢であるから、確かに眺望が素晴らしく良いだろうことくらいは、下から見ているだけの人間にも容易に推測できる。 だが。 これは見守る人間にとっては、限りなく心臓に悪いのである。 特に、登っているのが自分が大切に思う女性とあっては。 「だーいじょうぶです!私、木登り得意なんですよ♪」 頭脳明晰で知られる研究院主任は、頭を抱えながら隣に佇む長身の男性に声をかける。 もう、自分ではどうしようもないかもしれない。 「クラヴィスさま、よろしいのですか?このままでは が危険です」 「それほど問題はなかろう」 「クラヴィスさま!」 語気を強めたところで頭上から再度のんきな声がかかる。 「ほら、エルンストさん見てください!雲がとってもきれいですよ。ね、お二人も登っていらしてくださいよ」 「…」 溜息をつきながら、エルンストは自分が絶対に勝てない少女を見上げる。 「、お願いですから降りてきていただけませんか?あなたに何かあってからでは遅いんです」 その言葉に今までじっと2人の様子を見ていたクラヴィスが反応した。 寄りかかっていた樹の幹から身体を起こす。 「そうだな。降りてくるがよい、。おまえに何かあれば皆が心配する。…無論私とて例外ではない」 「ええー残念。こんなにきれいなのにー」 「…」 重ねてクラヴィスが念を押す。 クラヴィスは普段寡黙なだけに、こういうときはかなり迫力があるのだ。 …逆らわないに限る。 「…はーい、わかりました。降ります」 下でエルンストがあからさまにほっとした表情を浮かべる。 クラヴィスは相変わらず無表情であるが、見る人が見れば安堵していることがわかっただろう。 「よいしょ…っと、きゃああ!!」 「「!!」」 バキッ ズザザザザザザザザッ 枝と葉が擦れる、激しい音。 その瞬間、は折れた枝と共に落下して地面に打ちつけられることを覚悟した。 (神様、ごめんなさい。やっぱりエルンストさんの言うこと聞かなかった罰があたったんですね。私、ここで死んじゃうの?わーん、死にたくないよぉ) ドサッ 「きゃあ!!…あ、あれ?痛く…ない」 の身体は、地面と衝突する前にしっかりとクラヴィスに受け止められていた。 とっさに動けなかったエルンストは、胸をなでおろす。 「あ、あの…クラヴィスさま…ええと…」 「…心配させるでない。」 「ごめんなさい、クラヴィスさま」 「、ご無事でなによりです。ほんとうにひやひやしましたよ。あなたに何かあったら私はどうすれば良いか…」 「ごめんなさい、エルンストさん」 「無事でよかった」 「クラヴィスさま、私、本当に死んじゃうかと思いました。助けて頂いてありがとうございました。…それで…あのぅ、下ろしていただきたいんですけど…」 は、クラヴィスに抱きとめられたままだった。 クラヴィスがゆっくりとを地面に下ろす。 「お二人とも、ご迷惑おかけしてすみませんでした」 「迷惑など…あなたにかけられる迷惑ならば喜んで受けますよ。…あなたに危険が及ばない限り」 「そなたが無事ならばそれでよい。だが、あまり無茶はするな」 「はい。ごめんなさい」 「…戻るとするか。もういいだろう?」 「そうですね。よろしいですか、?」 「はい。今日はありがとうございました。…あの、クラヴィスさま?」 「何だ?」 「えっと…また、私が落っこちても受け止めてくれますか?」 「…フッ…そうだな」 微苦笑を浮かべながら答えたクラヴィスを見て、少女に満面の笑みが浮かぶ。 そしてエルンストに向き直る。 ちょっぴりこわごわとした表情を浮かべて。 「エルンストさん、呆れちゃいました?」 「いえ、そんなことはありませんよ」 「よかったぁ!!じゃ、また一緒にお出かけしてくださいね」 邪気のない少女の言葉に、彼らが内心溜息をついたかどうかは定かではない。(fin) ****************** カウンタ不調で幻の1230キリ番となってしまった華月様のリクエストは、「クラ様とエルエルで、裏にある"あれ"vv」というものでした。 以前水晶月でいたずらさせて頂いた時は、かなり気合いれておいたをしたのですが(笑/いや、前回はスクリプトだけだったしさ)今回は何もしてません^^; 名前呼ばれないと意味ないかなぁ、と思って頑張って呼ばせてみたんですが、クラさましゃべらなすぎ!!ドリームの意味なし(笑) ちなみに華月様に送りつけたバージョンとここのバージョンは、微妙に違います。 どこがって?すぐにわかります(笑) |