飛行機雲の彼方に


天気の良い日曜日の午後。

映画を見終わって、喫茶店でお茶して。

こんな普通の恋人同士みたいなデートをしてると、あの数ヶ月が夢だったような気がしてくる。
(夢じゃないから、この人が目の前にいるんだけど)

本来だったら絶対に手の届かない人。
私が京に行かなかったらこの人に出会うことは無かったし、この人が京に行ってなかったら、町ですれ違っても知り合うことはなかったはず。
私達がこうして一緒に座っているのは、「運命のいたずら」でしかありえない。

そんなことをつらつら考えてたら。

「どうしたんです?何か考え事でも?」
「あ、いえ。あの…ちょっと不思議だな、って思ってただけだから」
「不思議、ですか。確かに私達にとってはこの現代世界そのものが、不思議とも言えますね。「京」にいたころはこのような日常がまた迎えられるとは思ってもみませんでしたから」

周りの人がちらちらこっちを見てるのがわかる。
幸鷹さんの外見は、実はかなり人目を引く。
一緒に歩いてて敵意を含んだ視線を受けたのも一度や二度じゃない。
そしてこのしゃべり方も普通よりはインパクトがあるだろう。
幸鷹さんはこういうのに鈍いから気付いてないと思うけど、やっぱり私と一緒って言うのは傍から見ると不自然かもしれない。
どうやっても兄妹くらいにしか見えないよね。

…なんか、落ち込みそう。楽しいこと考えなきゃ。

「幸鷹さんの少年時代って興味あるな。どんな子だったんですか?」
「ずいぶんいきなりなんですね?あまり面白くありませんよ」
「いいです。幸鷹さんのことならなんでも知りたいもの」
「そうですね…随分とかわいくない子供だったと思います。」

この人は数奇な運命を持った人。それでいったら「神子」なんてやってた私も負けてないんだけど、たった数ヶ月あそこで暮らしただけの私と、何年も過ごした幸鷹さんとでは全然違うと思う。
そんな幸鷹さんの子供の頃ってすごく興味がある。

幸鷹さんは少し苦いような、それでいて懐かしいような不思議な表情でとつとつと語ってくれた。

少年の頃の夢。
大空に翔く大志を胸に抱いて異国の地へ旅立った時のこと。
そして気付いたら…かの地で目覚めたこと。

いろいろな想いが込められていて。
こんな幸鷹さんを見るのは初めて。


「けれど、あなたに逢えた。私の人生も捨てたものじゃありませんね」



最後にさらりとそんなことを言うこの人がちょっぴり憎らしくて。

でもこんな午後も悪くないよね? (fin)





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作者より
初書き遙か2だったりします。

うう、幸鷹さんのセリフって、どうしても某主任さんが浮かんできてならない(~_~;)
根本は同じなのか、それとも私の書きわけができてないだけなのか。
そして主任さん書いてるときは平気なのに、幸鷹さんだと恥かしくて悶えるのはなぜだろう。。。

最初はどうやっても暗くなりそうな感じだったんですが、もがいているうちにちょっぴり明るくなりました。
少年時代のエピソードも入れたかったんですが、それはまたの機会に。


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