「あー、どうしたんでしょうか?なんだか今日は肌寒い気がしますねー。聖地で気温が変動するとは、研究院に何かあったのでしょうか」 なんとなく寒さを覚えたルヴァは、デスクから立ち上がり、外の様子を見ていた。 研究院は気になるが、こちらの書類も無視できるわけでもない。 ここは聖地であり、そうそう大問題が起こるとも考えにくい。 とりあえずきりのいい所まで終えてからエルンストを訪ねようと思い、机に戻りかけたそのとき、唐突に扉が開いた。 「ルーヴァvv」 「へ、陛下?」 「あーもう、そんな無粋な書類なんか置いちゃって!行きましょ♪」 「陛下、あ、あの?行く、とは?」 「もちろん決まってるでしょ。『雪の中のデート』よ。だから『陛下』はなしね」 「雪?」 たった今見ていた窓を振り返る。 そこには数瞬前まではなかった白いものが確かに舞い降りてきていた。 「これはあなたの仕業ですか?全く困った方ですね」 苦笑して告げる。 そこに怒っているそぶりは見えない。むしろ楽しんでいるかのような雰囲気。 「人聞き悪いこと言わないで。ちょっとエルンストにお願いしただけよ」 もちろん彼女も本気で怒られるとは思っていないのだ。 (これがジュリアスなら話は別だが、今回はしっかりロザリアを巻き込んでいるので、そのあたりも対策済みである) 「せっかくですから、参りましょうか。ね、アンジェリーク?」 「はい、ルヴァ様!」 しんしんと降り積もる雪の中。 幸せそうな笑顔を浮かべた金の髪の少女の足跡は、隣の青年のものにしっかりと寄り添って町に続いていたが、さやかに降り積もる雪にやがて消えていった。(fin) -------------- この初稿を書いたのは、今年の春のことでした。 そのまま出すにはあまりに季節外れだったので、冬近くなるまでハードディスクにお蔵入り。 クリスマス創作というにはちょっと微妙なのですが、二人が出かけた先はきっとクリスマスムード満点だったということで。 私には珍しく、ちょっぴり凝ってシーンごとに壁紙変えてみたりしたのですが、いかがでしたでしょうか? BACK |