エリザベート観劇録その21
帝劇9月24日マチネ 

キャスト(W分のみ)
トート   :内野聖陽
フランツ  :鈴木綜馬
ルドルフ  :井上芳雄
ルドルフ(少年期):苫篠和馬


井上ルドルフ復活スペシャルウイーク。
初演・再演見ていない私は、井上ルドルフは初見です。
正直井上君苦手なんですが(特に歌い方が…)最近ちょっとは上手くなったという話もあるし、ルドルフはとてもはまり役だったということなので、期待半分、怖いもの見たさ半分というところで行ってきました。
しかし井上出演日は恐ろしいほどチケット取りづらかった。
なんなんだ、一体。

で、感想。
はっきり言って第一声から(…だめだ、こりゃ)な感じ。
2001年再演版の悲惨なCDの頃から何の進歩もなしに聞こえる。
ミルクやハンガリーの役替えシーンも出演なしなのは、前月の主演による練習期間の短さを考えて譲歩できなくもない。
でも本番数日前にソロコンサートとかやってるんだよね、彼。
そんな時期にそんなものやらず、必死に練習してたらもうちょっと何とかなってたんじゃないのか?と思うぞ、素人目には。というのは脇に置いといたとしても。
他のメンバーが全員去年1年と今月で完全無欠な一体感、まさに一糸乱れぬ演技という出来なのに、芳雄君が入ることでそこにほころびが出来てくる感じ。
他メンバーが全員2005年仕様なのに、芳雄君だけが2001年で時を止めてしまったような印象を受けました。
いや実際そうなのかもしれないんだけど、他の舞台で何か得て成長してくるとか無いのか?
浦井君はたった半年ちょっとで、発声と芝居すべて格段の進歩だったから余計に思う。
何と言っても高音が出ない。仮にもテノールでAが出ないのはどうなんだ?
他の二人が易々と歌っているのに対し、一人だけ音を下げても歌えない。
一番の見せ場でこれって致命的ではないの?
そして、これも主役やってた弊害かもしれないけど、人に合わせることができない。
デュオでもコーラスでも一人だけ目立とう目立とうしているように聞こえる。
山口さんならそれでも引きずりおとしてあわせさせそうだけど、内野さんはそこまでの歌の技量はないので、どうも噛み合わず聞いていてもどかしかった。
演技もなんだか大仰で、解釈が違う気がした。
HASSの幕を引きずり落としたあと、浦井君やパクさんは呆然と取り落とすのだけど、井上君は地面に叩きつけるのね。
これがどうしても納得いかない。
叩きつけるってことは「悔しい」のでしょう?
私のイメージではあそこではやはり「悔しい」どころではなく「呆然」が正しく思えてしまう。
世界が知らない間に変わってしまっていた。その時代の波の力は留まるところを知らない。
運命に対して抗う術はないのだ、自分は本当に無力なのだ、と思い知らされるシーンだと私は思っているから。
本当に無力だと知らされたら、人間は悔しいとか怒るとかそういった感情の前に放心するのではないかと思うのね。
それに、ルドルフは悔しいと思うほどの力が残っていればまだ抗い続けたように思う。
それすらなくしてしまったから自殺への道をたどったのではないかと言うのが私の解釈。
だから、叩きつけるような演技っていうのはどうも納得できない。
なんでそんなに元気なのに自殺しちゃうんだよ!と、ね。
そういう意味で演技的にはパクさんが秀逸だったなぁ。
自分からトートの元へ行こうとしたり、どうしようもなくなって死を選ぶ際もまだ悩み続けて…という演技。
浦井君のとにかく耽美な、死に魅入られて陶酔してしまい、なにかの過ちで死を、というのも違う意味で説得力はありますけどね。
浦井君はやっぱり歌とルックスが好きなので(笑)

井上ルドルフはなんだか一部には熱狂的に受け入れられているようでしたが、私は全く受け付けられませんでした。
多分去年見てたらダントツに好きになってたんだとは思うんだけど、一人時代に取り残されてしまった感じ。
今年の他二人やアンサンブルの成長っぷりが激しいからね。
まあ、とりあえずお祭りだったということで。
綜馬さんが異常なくらいシシィ激ラブでめちゃめちゃかわいかったのと、うっちーがまた進化してたので、もうなんでもOKです。




これが今年のラストエリザだったということは考えまい。。。