極上の音楽を


え?珍しい。
私は思わず足を止めた。

「ルヴァ様、コンピュータなんかお使いになるんですか?」
「ああ、アンジェリーク。私がコレを使ってるのはめずらしいですかね?」

苦笑しながらもキーボードを操る手は止まらない。

「いえ。そういうわけじゃないですけど」

意外。
見た目とは裏腹に、とっても器用なんだ、この方。

うわ、指長いんだ。手、きれい…。

華麗にキーボードを舞う指は、心地よいリズムの音楽を紡ぎ出す。
つい見とれていたら。

「どうかしました?」

いつのまにか指は止まっていて、瞳を覗き込まれていた。
ブルーグレーの視線が真っ直ぐ向かってきて、ちょっと眩しい。

「…ルヴァ様、指長いんですね」
「はぁ…それは褒め言葉なんでしょうか?」
「はい、もちろんです。お邪魔してしまいましたね、どうぞお仕事続けてください」

指が紡ぎ出す極上の音楽の続きを聴きたくて。
そっとドアを閉じかけて。

あ。そうだ。

思い出してもう一度ドアを開けて告げる。

「ルヴァ様、お誕生日おめでとうございます」   (fin)


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ハードディスクの片隅に眠っていた作品です。
あまりに短くて、出そうかどうしようか悩んでたんですけど、
ルヴァ様のお誕生日になにもしないのはあまりに寂しいので、ちょっぴり書き足してお誕生日創作にしてみました。

ルヴァ様、不器用って言われることが多いですけど、私のイメージでは、案外音楽とかコンピュータとかは強そうな気がします。
アナログなイメージのルヴァ様が実はハイテクだったらびっくりするだろうなぁ、というのが最初にこの話を思いついたきっかけです。

(フリー配布は終了しています)
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