放課後の時間 (普通科は練習室から少し遠いから) 優しい声で。 (君はゆっくりでいい。無理に急がなくていいから) 音色と同じように端整に響く言葉は冷たいようだけど、本当に優しく、蓮君はそう言ってくれる。 でも音楽科と普通科との距離は大きい。 授業中はともかく、昼休みもちょっぴりしか会っていられないのは寂しくて。 だから私は放課後になると急いで練習室に向かうのだけど。 「どんだけ遠いのよぉ!」 心の叫びは、勢いで口に出てしまったらしい。 周囲の生徒が不思議そうに振り返る。 「あれ、こないだのコンクールの優勝者だろ?」 「あぁ、だから普通科なのに楽器ケース持ってるのか」 「ヴァイオリン・ロマンスって本当だったのよね〜憧れちゃう♪」 「うらやましいよね〜」 遠巻きにしてるし、小声(のつもり)だし、本人に聞かせるつもりなど、毛頭ないのだろうけど。 (聞こえてるっての!) しかしこの学院内で、学内コンクール優勝者という肩書きはそれほど安くはないのだ。 気を取り直して、ヴァイオリンケースを抱えなおす。 周囲ににっこり微笑んで、なんでもないです、とごまかして歩き出す。 私だけに聞こえる、あの音を目指して。 扉を開いたとたんに音の世界に包み込まれる。 練習室の扉を開けると、予想どおり蓮君はもう来て練習していた。 初めて会った頃初心者だった私には分からなかったけれど、蓮君の音楽は優しくなったんだと、皆は言う。 そんな音が心地よくて、しばらく声もかけずに聴き入っていたら蓮君が気付いた。 「香穂子」 「やっぱり間に合わなかったなぁ。今日こそは先に来られたかと思ったのに」 ・・・あの音が聴こえた時点から、分かってはいたけど。 ちょっぴり悔しいから、そんなふうにうそぶいてみる。 「いつも言っているだろう?急いで万が一にも転んだりしたらどうするんだ?」 予想どおりちょっぴり顔をしかめる蓮君。 「それに・・・俺が待っていたいんだ、君を」 ちょっぴり頬を赤くしてあらぬ方向を向いてしまった蓮君がかわいくて、愛おしくて、思わず笑顔になって。 いつものように私は言う。 「ね、弾いて?蓮くんの音が聴きたい」 「・・・何がいいんだ?」 君の練習の時間なんだが、と、ため息をつきながらも、ヴァイオリンを構える蓮君。 その優しさが、 (好き) この気持ち、あなたにどれだけ伝わっているのかな? そんなことを考える、幸せなひととき。(fin) ------------------------ コルダ初創作は、皆様予想どおりのカップリング。 コンクール終了後・・・というか、月森珠玉後でした(笑) あのEDムービー、反則です。(←PC版ユーザ) あんな麗しいスチル見せられたら、おもわずすっ転んでしまうじゃないですか!(笑) コルダは、誰とのカップリング考えてても楽しいです。 アンジェや遙かは特定の人しか書きませんが、コルダはオールキャストになると思います。音のくせとか考えてるのも楽しいし(笑) |