すれ違いの未来

どうして会ってしまうの?貴方に。

「アンジェリーク?」
「ヴィクトール様…」

そんな優しい顔をしないで。その笑顔でこっちをみないで。
あきらめられなくなるから。ほらもう視線が釘付け。
貴方の笑顔はあの日のまま。私たちはもうあの頃とは立場が違うのに。
ほら、そんな風にちょっと困った顔でこっちを見るのも変わってない癖ね。

あのとき、そう、私が新宇宙の女王に指名された時。
もっと私に勇気があれば、今ごろはまったく違った関係でいたかもしれないけれど。
あるいはあなたに。そうしたら。
ただの教官と生徒として、普通の恋人同士として。変わらない関係でいられたかもしれないけれど。

それはすべて終わってしまった過去。過去を変えることは許されない。
あなたは、この宇宙の王立派遣軍を担う人。
私は私の宇宙を捨てられない。


「元気そうだな、アンジェリーク。いや、陛下と呼ぶべきか?」
「アンジェと呼んで下さい。ヴィクトール様。前みたいに」

ねぇ、アルフォンシア。女王は恋をしてはいけないの?
この想いを封印することなんてできるのかしら?

「アンジェ。レイチェルと仲良くやっているか?」
「はい。レイチェルってほんとに有能でいつも助けられてるんです」
「そうか。補佐官殿も頑張っているようだな」

レイチェル。女王候補時代は私たちのこと応援してくれてたわ。
今は気遣って、貴方の名前を口にすることさえあまりないけれど。

「そういえば、わざわざこっちに来たと言う事は、なにか急ぎの用事があるのだろう?」
「はい。陛下に」
「それはいかん。早く行きなさい。引き止めて悪かったな」
「いえ。では、ヴィクトール様、失礼いたします」
「ああ。元気で」

背中越しに貴方の視線を感じるわ。
頑張って演技してみたけれど、限界みたい。
お願い、この涙に気づかないで。
私たちはいつもこうやってすれ違う運命なのかしら。
この先、ずっと…。 (fin)


HOME