感謝を捧ぐ日


まぶしいほどに煌くクリスマスイルミネーションの梢の下。
遠くからかすかに聴こえてきた歌声。
近くに教会でもあるのだろうか?

"For unto us a Child is born"

「あ・・・」
「どうかしましたか?」

リュミエール様は思わず立ち止まった私に気付いて、数歩先から振り向いて下さった。

「この曲・・・」
「ああ、クリスマスが近いですからね」

"unto us "

「昔・・・まだ学生だった頃、この時期になるとね、学校で音楽会があったんです」
「はい」
「それでね。各クラスそれぞれ曲を選んで披露するの」

"a Sun is given"

曲は流れ続けている。


「よく聞く話ですね。私は残念ながらそういったものには縁がありませんでしたが」
「うん、それ自体は普通なんだけど。全クラスが発表し終わった最後にね、先生や見に来ている生徒の父母まであわせて、全員でこのクリスマスの合唱曲を合唱するのが恒例だったの」
「それは・・・なかなかすごいことなのではありませんか?」
「そうなんです。全員がクリスマスを信仰している訳じゃないけど、これは学校の「お祭り」なの。だから、信者じゃない人も、歌を知らない人も皆歌うの。講堂に集まった2000人位の人たちが一斉に歌うのは、ちょっと他では味わえない感動だったなぁ」

そう、信者の人も、全然知らない人も、席を立ってひとつになって歌うあの感動。
学院を離れてかなり経つけれど、あれは忘れられない思い出のひとつ。


「良い想い出をお持ちなのですね」
「はい。だから、クリスマス、大好きなんです」
「そうですか。ふふ、そうですね、私もなんだか好きになりましたよ」
「え?」
「あなたが幸せそうな顔をして話されるから。とても素敵だったんでしょうね、その合唱は」
「いつか、リュミエール様にも聞かせてあげたいです」
「そうですね、私も聞きたいです。いつか・・・二人で、いえ、三人で参加できると良いですね」
「三人?」

一瞬首を傾げてしまったけれど、すぐにその意味に気付いて真っ赤になる。

「リュミエール様・・・」
「あなた似の女の子でないと困りますね。スモルニィは女子校ですから」

にこやかに笑いながら告げるリュミエール様は、ときどきいじわるかもしれない、なんて思ってしまったり。

「わ、私は、リュミエール様似の方がいいと思います!絶対!」
「おや、そうですか?では双子を産んでください。それなら良いでしょう?」
「もう、リュミエール様ってば!」

"the everlasting Father, the Prince of Peace."


「曲も終わったようですね。では、行きましょうか、アンジェリーク」
「はい、リュミエール様!」

再び差し出された腕につかまって、ゆっくりと歩き出す。

我らに与えられし主に感謝を捧ぐ日に、あなたの隣にあることに感謝します。(fin)



※文中の歌詞はヘンデル「メサイア」より12曲「わがためみどりごを神は与えたもう(イザヤ書)」よりの抜粋です






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2003クリスマス創作第二弾はリュミ×リモです。
日ごろお世話になっている某お姉様の為、書かせていただきました。
これまた信じてもらえないんですが(笑)、私はリュミエール様も好きです。

私はひねくれものなので、いわゆる「クリスマスソング」(J-POPやら、ジングルベルやら)が流れてくるのより、 「救世主(メサイア)」や「くるみ割り人形」が流れてくる方がクリスマス、っていう感じがします。
母校はいわゆるキリスト教校ではなかったんですが、創立者が牧師様だった関係で、この時期はやたら賛美歌やら なにやら歌わされたり演奏させられたりしてましたね^^;

ちなみにこの曲、私の手元にある譜面の日本語詞だとものすごく間抜けです。
「霊妙!代議者!(Wonderful! Counsellor!)」って・・・(爆笑)
実際に歌う場合、フーガをまともに歌うと酸欠になります^^;
綺麗な曲ですので聴いてみてはいかがですか?